中国メイクアップブランドの台頭とグローバル化のプロセス:業界の現状と発展トレンド
(三)
1.4. 中国メイクアップ代表企業の概況
中国のメイクアップ市場は競争が激しく、ブランドは主に国際ブランド、中国新鋭ブランド、中国クラシックブランドに分類される。国際ブランドとは、世界的な影響力、高い市場シェア、およびブランド認知度を持つメイクアップブランドを指し、主要な大型国際ブランドにはロレアル、エスティ ローダー、資生堂などが含まれる。中国新鋭ブランドは、市場での歴史は浅いものの、成長の可能性、イノベーション力、市場影響力を持つブランドを指す。これらのブランドは短期間で急速に台頭し、独自の市場ポジショニング、革新的な製品、またはマーケティング戦略を通じて市場シェアを獲得することが多い。新鋭ブランドの代表格は花西子、完美日记(Perfect Diary)、上海橘宜などである。中国クラシックブランドは、市場での歴史が長く、高いブランド認知度と安定した市場の地位を持つブランドを指し、主に卡姿兰(Carslan)、百雀羚、珀莱雅などがある。
2023年、国内トップ10のメイクアップ企業はおおむね3つのグループ(梯隊)に分けられる(2024年通期の売上高は未公表のため、暫定的に2023年のデータを使用)。珀莱雅(PROYA)が他を大きく引き離して第1グループの首位を確固たるものにしている。第2グループは売上高40~60億元規模の企業で構成されており、順に上海家化(Jahwa)、貝泰妮(Botanee)、水羊股份(S'Young)、上美股份(Chicmax)となっている。第3グループは売上高20~40億元の間で、順に華熙生物(Bloomage Biotech)、巨子生物(Giant Biogene)、逸仙电商(Yatsen)、毛戈平(MGPIN)、福瑞達(Freda)となっている。特筆すべき点として、丸美股份(Marubi)はトップ10入りを逃したものの、昨年の売上高は22.26億元に達し、10位の福瑞達との差は2億元未満であった。全体的に見て、本土トップ10企業の粗利益率は概ね70%以上であり、強力な収益力を示している。
図表 11 2023年中国美容化粧品業界の上場企業の業績比較
資料出所:各社発表資料
本土のメイクアップブランドトップ10企業は総じて力強い成長を実現しており、各企業の総売上高に占める割合も大きくなっている。珀莱雅、福瑞達、丸美股份からはそれぞれ2つのブランドがトップ10にランクインしており、珀莱雅傘下の「珀莱雅(PROYA)」と「彩棠(Timage)」はそれぞれ71.77億元と10.01億元で1位と8位に位置している。これに対し、福瑞達はよりバランスの取れた成長を見せており、「璦爾博士(Dr.Alva)」と「頤蓮(Rellet)」は昨年それぞれ13.48億元と8.57億元の売上高を達成し、いずれも成長率は20%を超えている。しかしながら、ブランド間の売上格差は依然として顕著であり、1位と10位の間には65.34億元の差があり、トップ10ブランドの半数は20億元を突破していない。
多くのブランドは企業の売上高に占める割合が70%を超え、「中核となる柱」となっている。これらのブランドの急速な台頭は「主力製品(ヒーロープロダクト)戦略」の恩恵を受けている。データによれば、主力製品は消費者のブランド認知を効果的に構築し、業績成長を推進することができる。例えば、珀莱雅の「朝C夜A(朝にビタミンC、夜にビタミンA系成分を使用するスキンケア法)」セットや韓束(KANS)の「紅蛮腰(レッドウェスト)」セットなどは卓越した実績を残している。珀莱雅は主力製品のアップグレードを通じて、天猫(Tmall)プラットフォームの複数のカテゴリーで首位を維持し、市場の地位をさらに確固たるものにした。同様に、可復美(Comfy)は組換えコラーゲンのコンセプトで新たなトレンドを牽引し、強力な主力製品ポートフォリオの構築に成功して、ブランドに安定した利益成長をもたらした。さらに、精緻なマーケティングおよびチャネル戦略もブランドが急速にブレイクするための鍵となる。例えば、韓束は抖音(Douyin)上で再生回数の多いショートドラマを活用し、2023年の抖音EC美容化粧品ブランドランキングのトップに躍り出た。総じて、市場の競争は依然として激しく、ブランドは強力な製品力、マーケティング力、チャネル力を備えてこそ、熾烈な市場から抜け出すことができる。
図表 12 2023年中国美容化粧品ブランドの業績比較
資料出所:各社発表資料
中国国内の消費市場の回復が全体として期待を下回る現状において、海外市場が中国の美容化粧品企業の「第2の成長カーブ」であることは間違いない。海外売上高比率の観点から見ると、2023年現在、中国の一部の美容化粧品ブランドの海外進出度合いは二極化している。珀莱雅、尚美股份、貝泰妮、巨子生物などの企業は海外事業の割合が極めて低く、ほぼ無視できるレベルである。一方で、水羊股份や上海家化などの企業は海外売上高比率がいずれも20%を超えており、越境ECや自社ECサイト(独立サイト)などを主な進出チャネルとしている。
図表 13 2023年中国の一部美容化粧品ブランドの海外進出状況
データ出所:各社発表資料
海外で自社ECサイトを持ち、海外のソーシャルメディアアカウントを開設し、複数地域での決済に対応している以下のいくつかのメイクアップブランドの海外での実績を見ると、現在、中国の一部美容化粧品企業が海外進出の重要性を徐々に認識し、多様な決済チャネルの構築やソーシャルメディアマーケティングの積極的展開などを通じて、海外市場への積極的な拡張を進めていることがわかる。
花知晓(Flower Knows)が日本市場を主戦場としているのを除き、残りの5つのメイクアップブランドは、人民元、米ドル、ユーロ、英ポンド、カナダドル、日本円、香港ドル、マレーシアリンギットなど、複数の通貨単位での表示を選択できるようにしている。これにより、複数の市場の消費者が通貨換算の手間なく製品価格を把握できるようになっている。さらに、決済方法もApple Pay、AMEX、JCB、Mastercard、PayPal、VISAなど、ターゲット市場の主流の決済チャネルに対応している。
図表 14 中国有名メイクアップブランドの海外自社ECサイトが対応する通貨の種類
データ出所:インターネット
海外のSNSプラットフォームを見ると、これらのメイクアップブランドはTikTok、YouTube、Instagram、Twitter(X)などにアカウントを開設し、SNSマーケティングを海外市場展開の重要な一部として位置付けている。国内のECプラットフォームにおけるトラフィック獲得手法はすでに成熟しているため、海外進出するメイクアップブランドの多くは、国内で一般的なメディアバイイングやIPマーケティングなどの汎用的な手法をそのまま複製するだけで済むからである。
図表 15 中国有名メイクアップブランドの海外SNSでのフォロワー状況
データ出所:インターネット




