中国小型家電業界の発展現状分析
(一)
序文
「日本の経験を頼りに、手探りで川を渡る」。中国の消費財メーカーの日本進出について議論を始める際、我々の脳裏に真っ先に浮かぶのがこの言葉です。
一方で、グローバル消費財市場の先進地である日本は、早くも1960年代には大衆消費社会へと突入しました。サントリー、資生堂、セブン-イレブンなどは1980年代からグローバル化の歩みを進め、今日では中国の消費者にも広く親しまれる有名ブランドとなっています。他方で、1990年代から始まった景気後退や「失われた30年」と呼ばれる低成長期にあっても、日本はサイゼリヤ、ユニクロ、JINSといった世界的な企業を数多く育んできました。中国の消費財業界にとって、今後取り組むべき2つの大きな命題、すなわち「中国ブランドのグローバル化」と「高品質で持続可能な成長」に対するヒントは、まさに日本のこれまでの軌跡から見出せるかもしれません。
これら2つの命題は、不確実性に満ちた果てしない大海原のような領域であり、そこには多くの「X(未知数)」が存在します。しかし、確実に言えることがあります。それは、業界の発展サイクル、バリューチェーンにおいて伝達される価値、消費者のニーズを満たす製品、多層的な生活空間を網羅する販売チャネル、そして感情的な共感を喚起するブランドづくりといった要素は、消費財企業にとって普遍の探求課題であり、中国ブランドのグローバル展開が追求する目標でもあるということです。
一、中国小型家電業界の発展現状分析
1. 中国小型家電業界の概況および直近の市場動向
1.1 中国小型家電産業チェーンの概況
中国小型家電の産業チェーンは主に、川上の原材料および部品供給、川中の小型家電製造、そして川下の小型家電販売という3つの段階に分かれています。小型家電業界の川上にあたる原材料および部品には、電熱器、電磁弁部品、プラスチックなどの各種部品サプライヤーが含まれます。川中の小型家電製造企業には、フィリップス(Philips)やミデア(Midea/ 美的)などの外資系または中国資本の大手多国籍企業・総合家電メーカーから、ジョヤン(Joyoung / 九陽)やエコバックス(Ecovacs /科沃斯)などの各種小型家電メーカーまでが含まれます。川下の主要な販売チャネルには、天猫(Tmall)や京東(JD.com)などの総合ECプラットフォーム、蘇寧(Suning)、国美(Gome)、順電(Sundan)などの実店舗の家電量販店のほか、大型スーパー、各レベルの代理店・販売店、ブランド直営店などの各種流通チャネルが存在します。
図表1:中国小型家電産業チェーン
資料出所:公開情報を基に作成
全体的に見て、小型家電は家電業界から細分化されたサブセクターであり、現在、家電業界全体の成熟に伴い競争が激化し、精緻な分業体制が形成されています。産業チェーンの川上では、小型家電の種類によって必要な原材料や部品が異なるため、メーカーの数が多く、広範に分布しており、市場集中度が低い状態です。加えて製品の付加価値も高くないため、川上サプライヤーの川中メーカーに対する価格交渉力は低くなっています。川中においては、小型家電メーカーは生産する製品に応じて主に「キッチン」「ホーム(生活)」「パーソナルケア(美容・健康)」の3つのカテゴリーに分類されます。現在、一部のトップ企業は独自の中核技術を武器に、それぞれの細分化分野で高いブランド認知度を確立しています。例えば、キッチン小型家電を主力とするミデア(美的)やスーポー(Supor/ 蘇泊爾)、ホーム小型家電を主力とするエコバックス(科沃斯)やロボロック(Roborock /石頭科技)などが挙げられます。川下の販売段階においては、従来の実店舗専売店やスーパーのチェーン展開よりも、一定の規模の経済性を有するオンラインECチャネルが現在市場に対する強い支配力を持っています。
