中国チェーン企業の参入戦略と成長機会
(二)

1.2 中国の主要チェーン外食企業の発展概況と海外展開戦略

世界各国・地域間の交流が徐々に正常化する中、複数の外食ブランドがさまざまな形で海外展開を強化しており、とりわけ火鍋、茶飲、中華ファストフードの3分野が目立つ。以下では、4つの代表的な外食企業について、現状(経営・財務状況)と海外展開の概要を示す。

(1)海底撈

中国の店舗数はコロナ禍中に急拡大し、2021年にピークを迎えた後はやや減少したものの、全体としては安定している。新規出店を都市階級別に見ると、主に二線・三線以下の都市に集中しており、一線都市の新規出店数は2020年以降徐々に減少し、足元ではほぼ頭打ちとなっている。

売上高ベースで見れば、海底撈は依然として火鍋業界で最もブランド価値の高い企業の一つである。主な売上高は5年間で約56%増加し、成長基調が続いている。店内飲食の制限や消費回復の遅れなどが重なり、純利益は一時的に赤字に転落したが、積極的な業態見直しにより2023年には44.95億元まで回復した。

海外店舗数は2019年の38店から2023年には115店へと急増し、開店スピードは維持されている。地域別に見ると、東南アジアが中心で、シンガポールが最も多く20店、ベトナム17店、マレーシア15店が続く。さらに北米・東アジアも重点エリアとして、アメリカと日本でもそれぞれ10店舗以上を展開している。

図表11 海底撈(ハイディラオ)のグローバル店舗分布(2023年末時点)

出典:同社年次報告書

海外店舗の売上高は5年間で200%超増加し、2023年には6.8億ドルに達した(うち東南アジア市場が50%以上を占める)。海外店舗の営業利益率は2022年に初めて黒字化(4.1%)し、2023年には9.0%へとさらに改善。背景には、規模の拡大に伴うコスト効率の継続的な改善がある。

図表12 海底撈の主要財務指標(2019-2023年)

図表13 地域別売上構成比(2023年)

出典:会社公告

(2)蜜雪冰城

2021年から2023年第3四半期末までの店舗推移を見ると、グループ全体では20,001店、28,983店、36,153店と加速的な拡大を続けている。中国の店舗構成比は低下し、2021年の98.6%から2023年には89.0%まで下がった。2018年に第1号海外店を出して以降、海外店舗は2021年末の270店から2023年第3四半期末には3,975店へと、3年間で約14倍に膨らんだ。現在は東アジア・東南アジアを中心に11カ国へ進出している。

図表14 蜜雪冰城 地域別店舗数(単位:店)

出典:有価証券届出書(目論見書)、和君整理

中国と海外の同時急拡大により、売上高は2019年の25.66億元から2023年1-9月期の153.93億元へ、純利益は同4.42億元から24.53億元へと急伸し、高成長を維持している。

図表15 蜜雪冰城 売上高及び増加率(2019-2023年9月期、億元・%)

出典:同社有価証券届出書

図表16 蜜雪冰城 純利益及び増加率(同上)

出典:同社有価証券届出書

(3)九毛九

2024年上半期の連結売上高は過去最高を更新したが、伸び率は鈍化した。利益面ではここ数年で変動が大きく、2024年1-6月期の純利益は前年同期比で大幅に減少した。

図表17 九毛九の売上高と成長率(2018-2024年6月期、億元・%)

データ:九毛九2018-2024年半期業績公告

図表18 九毛九の純利益と成長率(同上)

データ:九毛九2018-2024年半期業績公告

同社はマルチブランド戦略を採用している。九毛九西北菜、太二酸菜魚、怂火鍋、頼美麗烤魚、賞鮮悦木などを展開し、中国の店舗数は順調に増加している。2024年6月末時点でグループ全体の店舗数は771店(直営766店、FC 5店)に達し、前年同期比で150店増加した。海外(中国以外)では主に太二ブランドで22店を展開しており(前年同期比14店増)、シンガポール、カナダ、中国台湾に集中している。

海外(中国以外)では主に太二ブランドで22店を展開しており(前年同期比14店増)、シンガポール、カナダ、中国台湾に集中している。

図表19 九毛九グループのレストラン数構成

データ:九毛九 2023年・2024年上半期業績公告

(4)呷哺呷哺

2024年1-6月期、呷哺呷哺は売上高・利益ともに減少した。営業収益は約24億元(前年同期比15.9%減)、純利益は黒字から赤字へ転落した。2021年から2023年までの3年間で累計赤字は8.45億元に達しており、グループは継続的な赤字状態にある。

図表20 呷哺呷哺の営業収益と成長率(2020-2024年、億元・%)

データ:呷哺呷哺 2020-2024年業績公告

図表21 呷哺呷哺の純利益(億元)

データ:呷哺呷哺 2020-2024年業績公告

収益悪化を受け、稼働効率の低い店舗の閉鎖を進めた。2024年6月末時点の全球店舗数は1,072店(前年同期比▲27店)。海外店舗は全体の1%に満たず、主に中国台湾・シンガポール・マレーシアに集中しており、海外市場への浸透は依然として浅い。

この現象を受け、呷哺グループは今後、海外展開の力度を強化し、「中国の飲食文化を世界に発信する」という使命を担って、経営・組織管理の改革を深化させる。具体的には、双本部(デュアル・ヘッドクォーター)運営モデルを推進し、海外事業部を新設し、国際化企業への変革を加速させる。今後2年間で、呷哺呷哺グループは海外にセントラルキッチン(CK)を含む関連産業チェーンを展開する計画であり、当該チェーンは海外市場だけでなく、国内市場向けの「海外中央厨房」としても機能させる。これにより、国内外のサプライチェーンが相互に連結され、補完し合い、相乗効果を生み出す体制を構築する。

図表22 呷哺呷哺のグローバル店舗分布

データ:呷哺呷哺 2024年上半期業績公告

まとめ:以上4社の代表的チェーン外食企業の現状と海外展開状況を総合すると、中国のチェーン外食企業の経営は新型コロナの影響を大きく受けたものの、収益と純利益はコロナ収束後に徐々に回復しており、規模の大きい企業ほど中小企業より回復スピードが速く、上位集中の傾向も強まっている。ただし、全体として中国チェーン外食企業の海外展開はまだ初期段階にあり、海外店舗比率は依然として低い。店舗の大半は東南アジア市場に集中しており、欧州、北米、日本、韓国などの先進国市場への浸透余地は大きい。その背景には、チェーン企業における経営管理水準の向上がある。